『エントラップメント』

さしものS・コネリーも、今回はヒロインに喰われた!!

ありそうでそうないのが、『怪盗』モノ。厳重な警備をかいくぐり、高価なお宝をス
マートに盗み出す。私の貧弱な知識では、B・ウィリスの『ハドソン・ホーク』(超
駄作)か、『怪盗ルビィ』(小泉今日子と真田洋之じゃあロマンを感じないなあ)く
らいしか思い出せないなあ。あ、『ピンク・パンサー』と『怪盗ファントマ』はそう
なのかな?アニメでは『ルパン三世』があるんですけどねえ。全て金に換算される現
代においては、美意識で盗みを行なう怪盗は生き難い存在なのかもしれませんね。

美術品の盗難事件が続発、盗まれた美術品はすぐさまオークションにかけられ、持ち
主は保険でそれを買い戻す。高価な品物だけに保険金の支払い額も莫大なもの、業を
煮やした保険会社は、敏腕女性社員であるジン(C・ゼタ=ジョーンズ)の発案で、犯
人と目させる伝説の大怪盗マック(S・コネリー)を捕らえるべく、罠を用意するのだ
が....

このテの映画の醍醐味は、いかなる手段を使って目指す獲物を手に入れるか、という
ところにあります。その意味で、冒頭での高層ビルの侵入シーンはスピーディーかつ
斬新。そして中盤の黄金のマスクの強奪、入念な準備と訓練を繰り返し、様々な小道
具と見事なコンビネーションによる華麗な盗みのテクニックには思わず唸ってしまっ
た。これに比べると、銀行のコンピュータにハッキングをかけて口座から金を引き出
すハイテク犯罪なんてのは、盗む金額は多けど見せ場的にはツマラナイ。やはりドロ
ボウのロマンは、知恵と肉体を駆使した盗みにあるんですねえ。

しかし、終盤のドンデン返しの連続の展開がイマイチ。本来は敵と味方が激しく入れ
替わるラスト付近の展開がこの映画にカタルシスをもたらすはずなのに、入り乱れた
人間関係がよくわからないまま映画が終わってしまう。『交渉人』もそうだったけど
、どうもこのところドンデン返しものは詰めが甘いモノが多いようです。『エントラ
ップメント』とは『罠にかける』という意味ですが、最終的にだれが仕掛けた罠にだ
れにがダマされていたのか、映画館を出た後しばらく考え込んでしまいました。監督
のJ・アミエルは、クランクインの1ヶ月前に急遽就任したのだとか、準備不足が演出
と脚本の甘さに出てますな。途中の展開が良いだけに、『スティング』や『シャレー
ド』の様なラストの爽快感が薄いのが実に残念です。

と、まあ悪口をつい書いてしまいましたが、ペトロナスタワー(クアラルンプールに
ある世界一のビルです)の連絡通路を使ったアクションシーンは、最近の『高所アク
ション』の中でも出色のデキで、ワイヤー1本で二人が吊られるところでは、足元が
おもわずムズムズしてしまいました。
配役的には、ヒロインのゼタ=ジョーンズが、『マスク・オブ・ゾロ』以上のキレの
良いアクションを見せてくれます。しなやかに赤外線センサーの網をくぐり抜けるシ
ーンは、新体操の演技を見ている様、文句ナシに格好イイ!彼女の活躍のおかげで、
さしものS・コネリーも影が薄くなってしまいました。

そうそう、この映画は最近のハリウッド映画では珍しく、アクションものなのに死人
が一人も出ない、爽やかなハッピーエンドを迎えます。それだけに騙し合いの結末が
わかり難いのがつくづく惜しい!!

 
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