『トーマスクラウン・アフェア』

役満金持ちにはかないません

人間だれしも自我は弱いもの、唯幻論を武器に『悪の華』の足裏攻撃を
エージェント・スミスを倒したネオのごとくブチ倒す事の出来る私でも、ブルジョワジーの生活には非常にヨワい。
カッシー
ナの家具、クリストフルの銀器、バカラのグラス、マイセンやヘレンドの食器、こう
いった物をあたり前の様に使ってる人を見ると、
「なにエラそうにしとんねん、メシ食うだけならダイクマで買った食器で十分じゃい」
と反発するより先に、
「本当はワシもそんなモノに囲まれた生活がしたい、
ワインぐるぐるしてウンチクたれたい、でも家がビンボだったワシにそんな資格はない、
あう〜、みんなビンボが悪いんや〜、そんなブルジョワな生活は一生楽しめんのんや〜!!」
と自我崩壊を起しそうになります。私がこの様な『金持ちコンプレックス』を抱く様
になった直接の原因は、家に金があったかどうかではなく、きっと幼少時のクリスマ
スプレゼントに『変身サイボーグ1号』を貧乏を理由に買ってもらえなかった事が
トラウマになっているせいでしょう。ゆめゆめ幼少期の心の傷を甘く見てはいけません。

で、『トーマスクラウン・アフェア』は「ホンマもんの金持ちはこれやで〜」とばかり
に贅沢三昧のシーンが次々に出てきます。我が脆弱な自我はコンプレックスを刺激さ
れまくった挙げ句、ゲシュタルト崩壊を起すところでした。
それにしても、日本映画で同じ様なシーンが出てきてもこんな事にはならないんです
けどね。これは私の中に
所詮ロケ弁食ってる連中に金持ちの演技はでけんという信念があ
る他に、ひょっとしたら深層心理に白人崇拝の意識があるのかも、
これじゃ『家畜人ヤプー』やがな、トホホ。

主人公ジェームズ・ボンドは、リチャード・マードック(仮名)を倒した後、ニューヨークでト
ーマス・クラウンと名乗って
企業買収で顧客から有り金ふんだくるアメリカンバブルの申し子
みたいな会社を経営しています。大金持ちの常で日常に退屈しており、ゴルフ一打に
10万ドル賭けるなど、刺激を求め続ける精神のヤク中状態、まるで金持って
るくせに万引きを繰り返すシロガネーゼの様です。美術オタクでもある彼
は、ついに社会的地位を賭けた『黄金の一発』、MOMAからモネの絵を盗
もうと計画します。あんたはクリスチーネ・Fかいな。貧しい不法入国者を騙して手先
に使い、まんまと絵を盗む事に成功しますが、朝食に青汁を欠かさない健康オタクの
保険金サギ専門の女賞金稼ぎキャサリンに疑われてしまいます。ところがトーマスは
慌てない。ボンド時代に鍛えたテクニック(何の?)と、
豪邸・グライダー・自家用ジェットにカリブの別送という財力の四暗刻
の前に、さしものキャサリンもあえなく落城。この女、海千山千のツワモノと
思いきや、トーマスが別のネーチャンとデートしてる写真を見せられただけで半泣き
状態、あのなー、今時少女漫画でもそーゆーヒロインはおらんよ(爆)。もうイヤと
いうキャサリンにトーマスは僕を信じろという女たらしの常套句で押しまく
りますが、彼女が折れたのはブルガリのネックレスのために違いありません。やがて彼は潮時
と(たぶん)ケイマンあたりに高飛びすべく準備を始めます。モネ強奪犯が彼である
証拠を掴んだ彼女は、彼を警察に売るべきかどうか迷いますが、トーマスが例のネー
チャンと再び遭っているところを見て、結局タレ込んでしまいます。しかし彼は臆す
る事なく、彼女に絵をもとの場所に返すと宣言、翌日白昼堂々MOMAに現れます。警官
だらけの館内で、いかにして絵を戻すかというのはこの映画の最大の見せ場なので書
けませんが、思わず『ウソやろ〜』と唖然としたのは私だけではないはず、
でも美術品をそんな扱いしてええのんか!まあカンオケにルノワール入れようとした斎藤了栄よりはマシですけ
どね。

しかし金持ちの道楽ちゅうのは罪つくりですなあ。キャサリンに想いを寄せる警官も
出てきますが、所詮はハコ下貧乏な公務員VS役満続きの大金持ち、勝負はハナからつい
てますがな。♪ダイヤモンドに目がくらみぃ〜、というのは洋の東西を問わず同じな
んですなあ。しかしあの二人これからどうするんでしょう。まあトーマスはケイマン
に逃げても、後でイギリス海軍が迎えに来るから心配ないですけどね。来年の春に
はボンドに戻っている事でしょう。

それにしても、レネ・ルッソ、チチ出しても下品にならないとこはさすがでおますな。森川美
ではこうはいきますまい


 
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