『TAXI』

脳天気な警察に律義な強盗、これがフランス流?

その一、フランス人は怠け者ということになっている。(らしい)
その二、フランス人は(基本的に)ドイツ人をいけすかん奴等と思っている。(らしい)
これは私のフランス語の先生(もちフランス人)が言っていた。
で、『TAXI』である。
ところは南仏・マルセイユ、なりたてのタクシー運ちゃんであるダニエルは、抜群の
ドライビング・テクニックを持つスピードマニア、
スピード違反の取り消しを条件に、新米刑事エミリアンの銀行強盗の捜査を手伝うハ
メになってしまった。ダニエルは豊富なメカの知識で、ドイツからやってきた強盗団
に迫っていくのであった.....
なんて書くと、すわ迫力の刑事アクションか!と、思うでしょ。
違うんだな、これが。
まずダニエルのタクシーがすごい。普段は普通のプジョー405なんだけど、ひとたび
ダッシュボードのスイッチを入れるや、スポイラーがせり出し、トレッドが広がる。
この『警察ぶっちぎりモード』の時は、ステアリングも純正からナルディ製に取り替
えるという念の入れよう。もうまるでマンガである。
彼が犯人逮捕に協力するのは、ひとつは違反の取り消しなんだけど、もうひとつ、と
っとと事件を片づけて、恋人と○○したいからなのである。
『相棒』の刑事エミリアンも、事件より同僚の女刑事の方に夢中だし、肉屋に車で突
っ込むは、犯人に浮浪者扱いされてごみ箱にほうり込まれるは、アパートを火事にし
てしまうはで、こちらのドジぶりもなかなかのもの。
対する強盗団はその名も『メルセデス』。律義にも、予め予告した銀行に真っ赤なベ
ンツで乗り付けて襲い、トレーラーで車体を塗り替えて逃走する手口を毎回繰り返し
ているのだ。(この連中が、どうしようもなく『ドイツ人』なんですな)
カリカチュアライズされた登場人物に、漫画の設定のようなタクシー、そう全体にた
だよう雰囲気は『ルパン三世』といった感じである。
製作総指揮はリュック・ベッソン、『フィフス・エレ、メント』もそうだったけど、
この人ホントはマンガチックな世界の方が好きなんじゃなかろうか。(劇中ベッソン
氏も特別出演しています)
ともかく、フランス人がアクションもの(?)をつくると、こんな感じになるという
映画なのであります。
しかしメルセデス(ドイツ)をプジョー(フランス)がやっつける、ってシチュエー
ションも、両国の複雑な関係を示唆していますな。(劇中けっこう露骨にドイツ人を
揶揄してます)
プジョーも堂々と宣伝協力してますが、あれはどうみても違法改造なんだけど、おお
らかっつーかなんつーか、フランス人の懐の広さを感じますな。

 

 

映画の部屋へもどる