『催眠』
初っぱなから何なんですが、久々に後味のものすごく悪い映画を観てしまったな、と 感じてしまいました。映画館は吾郎ちゃん目当ての女子高生で一杯でしたが、当てが 外れたのでは。 都内各地で、突然奇妙な自殺事件が相次いで発生した。披露宴の最中に自分の首をネ クタイで締めて死んだ新郎、妻の誕生日に飛び降り自殺した老人、膝が折れるまで全 力疾走してショック死したマラソン選手の少女。いずれも死の直前に「緑のサルがや ってくる」とつぶやいて..... 一方、バラエティー番組で催眠術のコーナーを持っているインチキ催眠術師のもとに 、ユカという多重人格者が現れ、救いを求める。 大学で心理学を研究している嵯峨は、自殺事件の捜査に協力を求められるが、その過 程でユカがこの事件になんらかの関わりを持つのではないかと考え、彼女に接触しよ うとするのだが...... 主人公の嵯峨を演じるのは『カルニ・マグイッチ』(爆)じゃなくて稲垣吾郎、ユカ は『ハラニ・オリゴッチ』(大爆)じゃなくて菅野美穂。菅野美穂ってば、最近この テのエキセントリックな少女の役が多いですね。悪魔に憑依された女子高生(エコエ コアザラク)、不死身の化け物(富江)、トラウマに苦しむ悪魔の様な美少女(恋の 奇跡)。で、この映画のユカも相当きてます。宇宙人になっちゃった時なんか、もう 眼がイっちゃってるもんね。第4の人格が「キリェエエエエエエエエエエ〜」なんて叫 びを上げると、皆失神してしまう。いやこれもう立派なホラー映画(って、これサイ コホラー映画か)だもんね。大熱演です。 それにしても、主人公の嵯峨は、インチキ催眠術師にオモチャにされるは、目の前で 起こる自殺も止められない無力な存在です。そして事件を解決する事も、結局だれ一 人助ける事も出来ないまま終わってしまいます。その上、これから先ユカの幻影に惑 わされる(であろう)人生を送る事になるワケですから、なんともやり切れません。 このあたりが後味の悪さの原因でしょう。 悪いといえば、自殺シーンの描写も相当エグいです。スプラッターの好きなひとなら うれしいかも。 嵯峨はいいます。 「あなたの辛い記憶を消してあげましょう」と。 んな事ができるんかい! フロイト心理学か岸田秀先生の本を読んだ事のある人ならば、すぐにでもわかる事で すが、普段抑えつけている辛い思い出、よく言うトラウマ(ホントはトローマ、精神 的外傷ともいう)を心の中から消す事は不可能です。人間はトラウマを自覚し、それ と向き合う事で、初めてトラウマを克服出来る(と思う)のです。そんなに簡単な問 題じゃないでしょ。 さらに彼はインチキ催眠術師に言います。 「おまえみたいなヤツがいるから、催眠療法が誤解されるんだ そのセリフ、そのまんま制作者に返してあげましょう。(爆) まあエグエグと菅野の熱演を楽しむのであれば、十分に面白い映画ではありますね。 そうそう、宇津井健もおひさで映画に出てます。 相変わらず熱いね。(爆)