『メッセンジャー』

チャリンコライダーは時代のトレンドだ!!

最近マウンテンバイク(MTB)人気がまた上昇中だとか。最近のMTBは頑丈なフ
レームとサスペンションが装備されて、走りもいいけど見た目もカッコいい。そんな
MTB(ロードレーサーの場合もあるけど)でオフィスからオフィスに、1秒でも速
く書類や荷物を届けるサービスが、自転車便ことバイシクルメッセンジャー。私も都
内で何度か彼等の姿を見かけた事がありますが、さっそうと走り去るその姿にホレボ
レしてしまいました。
ホイチョイムービー第4作は、そんなバイシクルメッセンジャーがテーマです。

イタリアの有名ブランドのプレスとして優雅な日々を送っていた尚美(飯島直子)。
しかしある日突然会社が倒産してしまう。衣食住の全てを会社に賄ってもらっていた
彼女は、資産の全てを差し押さえられ、あっという間に身ぐるみはがされてしまう。
あわてて車で逃げ出すが、運悪く配達中のバイシクルメッセンジャー・横田(矢部浩
之)に怪我を負わせてしまう。無一文の彼女に提示された示談の条件は、彼の怪我が
直るまでの間、尚美が配達を引き受けるという事だった。やむなく彼女は横田が働い
ていた『トーキョー・エクスプレス』で、自転車オタクの鈴木(草薙剛)と共にメッ
センジャーの仕事をする事になるのだが.......

いやあ、さすがホイチョイ映画、演出や登場人物のセリフなんかはほぼ定石通り、観
客の予想を裏切らない実にわかり易いストーリー展開です。しかし自転車やウェアな
どのデティールの描写を充実させる事で、『トーキョー・エクスプレス』という架空
の会社に現実味を与えています。でも世界を描き込んでもビンボ臭くならないのはさ
すがですなあ。
そうそう、随所で東京都内の地名が出てきますが、このあたり『上品ドライバー』で
蓄積したノウハウが盛り込まれているんでしょうね。地図が出てくるわけでもないの
で、地方の人には解り難いかもしれないけど、恐らく観客の多数が東京人と予想して
いるからでしょうね。これもホイチョイらしい割り切りだと思います。

もっともこ映画、欠点がないワケじゃない。一つは人物描写に今一つ深みがない事。
加山雄三演じる元警官の島野が、何故『トーキョー・エクスプレス』に味方するのか
、尚美と岡野の関係は何なのか、彼等の心の動きをもう少し感じさせてくれる描写が
あれば、ドラマにもっと厚みが出たでしょう。
二つ目は、クライマックスのバイク便との競争が少々物足りなかった事。
バイク200台対MTB4台、物量的には自転車側が圧倒的に不利なはずなのに、バ
イク便側の作戦はあまりに単純。このレースが、知恵と物量の対決であったなら、自
転車側の勝利のカタルシスはもっと高まったはずです。

とはいうものの、自転車走行のスピード感は見事でした。渋滞の幹線道路をサイドミ
ラーに触れんばかりにすりぬけて行く様子、コーナーをノーブレーキでバンクさせな
がら走り抜けて行く映像は理屈抜きでカッコイイ!!ギアチェンジの時のディレイラ
ーの音、ペダリングの時の息使いなんか、あたかも自分がペダルを漕いでるみたい。
私なんか見終わった後、やたらと自転車に乗りたくなってしまいました。

いやあ、しかし今回は自転車の映画(筆者は自転車愛好家なのだ)というだけで点が
甘くなってしまった。
でも、辛気くさい鉄っちゃんモノや、大学未登校アイドルが出てるだけ映画なんかに
行くくらいなら、『メッセンジャー』はだんぜんオススメですぜ。

 
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