『金融腐食列島[呪縛]』

映画も現実も、日本の銀行は腐食まみれ

魅富臨小学校3年A組体育館特別試写会後
先生:(映画を見終わって)みなさん、この映画おもしろかったですか?
生徒A:タイトルの漢字が読めませんでした。
先生:そうですね、ずいぶん大仰なタイトルですね。『きんゆうふしょくれっとう、
じゅばく』と読むんですよ。『銀行の悪事で腐りきってしまった日本・原因は総会屋
との癒着』という意味なんですよ。みなさんわかりました?
生徒B:ストーリーがよくわかりませんでした。
先生:はいはい、あるところにヤクザがいました。彼はある銀行がやってる色んな悪
いコトの情報をウラのルートで手に入れました。彼はその情報で銀行を脅してお金を
巻き上げる事を思い付きました。ただし、そのままお金を貰ったのでは警察に怪しま
れてしまうので、彼の持ってるタダ同然の土地やビルを銀行に高い値段をつけてもら
って、それを担保にお金を“借りる”事にしました。銀行は悪い事が世間にバレるの
がいやだったので、渋々彼の言うなりになりました。そのうち世の中が不景気になり
、銀行も大赤字を出したので、貸したお金をなりふりかまわず返してもらわなくては
いけなくなりました。ところがその中にヤクザに貸したお金があったからさあ大変、
警察やマスコミにインチキして貸したお金と、過去にしでかした悪い事がみんなバレ
てしまいした。会社のエライ人たちは次々と逮捕されても、社員のみんなはオロオロ
するばかりで全然役に立ちません。そこであなたのおとうさんくらいの4人のおじさ
ん達が、この銀行を守ろうとしていろいろとがんばる、というお話なんですよ。
生徒C:え〜、これって例の第○勧銀が総会屋の○池ってひとにお金渡した事件みた
いじゃん。
先生:あらホント、ACBって○一勧銀の事だったのかしら。
生徒D:先生。どうしてそのおじさん達はがんばるんですか?
そんな悪い事ばかりしてる銀行なんかなくなってしまった方が良いと思います。
先生:そうですね、おじさん達のリーダーは、『おれたちが捨て石になってこの銀行
を救おう』といいますよね。それは日本人特有の考え方がそうなっているからなんで
す。日本の会社の形はお侍さん達の時代の、お殿様と家来という関係そのまんまです
。お侍の時代には、お殿様がどんなに悪いことをしても、家来はそのお殿様の家を守
るために、時には命まで差し出さなくてはならなかったんですね。明治時代になって
、会社というものが西洋から入ってきた時にも、社長=お殿様、社員=家来という関
係がそのまま受け継がれたという事ですね。だから会社の家来である社員の人は、会
社がどんなに悪い事しても、会社を救うためなら何をやっても許されると思っている
らしいですよ。よくワイロ渡した社員が『会社のため』とかほざいいてますよね。オ
ウム真理教の教徒が、『尊師のため』とかぬかして地下鉄にサリンぶち撒いた事件も
ありましたよね。そんなの彼等が所属してる狭い世界でしか通用しない言い訳ですか
ら、皆さんも“○○のため“とか言って悪事を正当化しようという人がいたら、構わ
ないからブチのめしてやりましょうね。
生徒E:どうして銀行が潰れるのが良くない事なんですか?
先生:色々ありますが、まず銀行が貸してくれるお金をアテにしている会社も一緒に
倒産するかもしれないという事、銀行に預けているお金が戻ってこないかもしれない
ので、預けている人達がパニックを起すのが恐いという事を大蔵省は言っていますが
、そんなのウソに決まってます。
生徒E:どうして大蔵省のいう事がウソなんですか?
先生:もちろんタテマエとしては本当でしょうけど、ホントの理由は倒産した日本の
銀行に代わって外国(主にアメリカ)の銀行が日本に入ってくるのがイヤだからなん
ですよ。太平洋戦争でアメリカに負けた屈辱から、日本は経済大国になってアメリカ
にたくさんお金を貸す(ホントです。アメリカの国債を一番持っているのは日本なん
です)事でオトシマエをつけました。ところが、アメリカの銀行の進出はトラウマで
ある敗戦の屈辱を思い出させる事になってしまうので、日本の銀行の倒産は防がなく
てはいけないという脅迫観念にとらわれてしまうんですね。コメ問題の時も、もっと
もらしい理由をつけて外米の輸入を拒んだ結果、自動車や電気製品の輸出でボロカス
に扱われてしまいましたよね。あれと同じですよ。そうそう、もうひとつありました
。日本の銀行が潰れると、大蔵省のお役人はノーパンしゃぶしゃぶで接待してもらえ
なくなるから、銀行を生かさず殺さず恩を売りつつシメまくってるんですよ。
生徒F:先生、ノーパンしゃぶしゃぶってなんですか?
先生:そんな誰でも知ってる事を聞かないで。大蔵省に限らず、日本のお役人の大好
きなものですよ。君も東大を出て大蔵省に勤めるようになったら、銀行のおじさんに
連れて行ってもらえますよ。
生徒G:大蔵省のお役人の接待をしてた片山のおじさんは、どうして銀行を辞めちゃ
ったんですか?
先生:彼はお役人を接待した事がマスコミにバレた責任をとらさそうになっていたん
です。でもホントはリーダーの北野のおじさんが、相談役の娘婿という事で、将来エ
ラくなりそうになったので、彼が言った“捨て石になろう”という言葉がウソだった
事に気がついたからなんですよ。みなさんも仲間ズラして自分だけオイシイ思いをし
ようとしてる人がいたら、容赦なくシメてあげましょうね。

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『サラリーマンに勇気を与える』なんて宣伝文句に書いてあったけど、これが本気だ
としたらずいぶんブラックなジョークである。自分を殺して会社に滅私奉公する人間
(佐高信氏は“社畜”と言ってますが)をホメてどうするの。こういう時に「こんな
腐った銀行、内情を全部告発して辞めてやる!」という社員こそ賞賛されてしかるべ
きだと思うけど。

以前山一証券が潰れた時、新規採用される予定だった学生達が内定を取り消されてえ
らい騒ぎになった事がある。私なんぞは、この学生達にこれっぽっちも同情しません
でしたね。だって考えてもみて欲しい。証券会社が絶対にやってはイケナイ損失補填
をやってた事がバレた直後なのに、よくそんな会社に就職したいと考えるものである
。彼等には社会的道徳心ってものが欠如してるとしか思えない。こーゆー手合いが社
会の利益より会社の利益を優先させる行動を取るんじゃないの?この映画のACBだ
って、悪い事して経営危機に陥ったんだから、そのまま潰れたほうが社会奉仕になる
というものだ。そんな会社を、銃で撃たれたり株主に罵られたりしながらも守ってい
く価値が本当にあるのだろうか?主人公達の行動原理が私には最後まで納得出来なか
った。これ観て(事実中高年サラリーマン向けに、男性の入場料を1200円に抑えてい
た)『よし、ワシも頑張ろう!』なんてヤツが増えるのは心底ゾッとする。(でもい
るんだろ〜な〜、単純バカな連中)ACBの溜りに溜まったウミが一気に吹き出すク
ライマックスの株主総会が“良い”株主の“心温まる”発言で拍手が湧き起って無事
に終わるという結末もトホホである。あれだけヤジ飛ばしてたんだから、総会屋も最
後までヤジリたおしてやればいいのに......

まあケナしてばかりでも何なので、良かったところをいくつか.....
株主総会のシーンは圧巻でした。こういう問題の多い会社の株主総会では、総会屋の
罵声に備え、社員同士でケンカ寸前になるまでヤジの応酬のリハーサをするんですね
。態度の悪い株主を排除する手順、最前列を社員株主で固めて社長を援護する席順の
決め方、もたいまさこ演じる弁護士が、総会の席順に注文を入れる社員に、「この総
会はチャカ(拳銃)もヤッパ(刀)もなんでもアリですから」と言ってニタッと笑う
ところは迫力満点、彼女の存在が映画の後半に奥行きを持たせています。

しかし『これが日本再生のシナリオだ!!』って、よ〜するに総会屋と手を切れ!っ
つー事じゃん。イトマン事件を起した住友といい、総会屋への利益供与を行なってい
た第一勧銀といい、日本の銀行がいかにモラル皆無か、一般預金者をバカにしてるか
、我々は散々見せつけられてきた。こんな銀行とツルんだ大蔵省が何を言おうが、総
会屋と癒着しない分、郵貯の方が絶対マシだと思うぞ。一般預金者より総会屋を大事
にする日本の銀行なんかとっとと潰して、シティバンクの支店をどんどん増やす方が
、日本国民にとってはいいんじゃないの?


 
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