『御法度』

13年待たせてコレかい

戦メリ』ってそんなにイイ映画ですかね。何かというとホモを連想する連中は、この映画をボウイと坂龍のやおい物語と見とる様だが、それはかなり歪んだ見方だと思うぞ。戦争末期の旧日本軍という理性を全く欠いた肉体言語集団の中に、突如として外人捕虜が乱入した結果、たけしと坂龍が捕虜連中に自我を揺さぶられた挙げ句精神錯乱を起し、最後はボウイをくびり殺して解決してしまう、というストーリーだったような気がする。で、オタクでやおい好きな女性がカン違いしてこの映画を強烈にリスペクトした結果、『戦メリ』は永遠のホモムービーに祭り上げられてしまった。以来自分がデンジャラスな芸術家だと錯覚した大島翁はピンクのジャケットを羽織りつつ世のキワモノ好き受けばかりを狙った発言を繰り返し、山本晋也並みに映画を撮らないクセに何故か映画界のみならず世間八百万ご意見番としてマスコミに君臨する事になってしまったのである。
全く、朝からうるせーんだよっ!!ホントに。
さすがにこのままでは自分が映画監督であった事を忘れられるのを恐れた大島翁が、ようやく新作のための金策に走りはじめた途端に脳梗塞で倒れたのは、彼にとっては不幸な出来事だと思うが、
その前に撮っていた洋ピン獣姦映画が速攻で打ち切られて誰も覚えていないという事を考えれば、映画界にとっては彼の存在などどうでも良い事なのかもしれない。そんな彼が“美少年”松田龍平君に一目惚れした挙げ句速攻で撮ってしまったのが『御法度』である。一応13年のブランクを経た久々の映画で、それも司馬遼新撰組モノ!!金にあかせてTVスポットも流しまくり、密かに期待して観に行ったワケなのだが、これが全くどうにも締まらないリビドータレ流し映画だったのである。当然の事ながら不入りのため速攻で打ち切られたが、お陰で『スリーピー・ホロウ』と『マグノリア』の公開が繰り上がったのはまあ良かったなあ。
時は幕末処は京都、池田屋騒動後の新撰組では新しい隊士の募集が行われていた。審査の結果、美少年加納惣三郎と浪人田代彪蔵が選ばれる事となった。入隊した惣三郎の美少年ぶりは隊内の男衆を惑わす事になったが、中でも同期の田代はイヤがる惣三郎を速攻でコマし、ホモ地獄に引き摺り込んでしまう。そしてホモ道に目覚めた惣三郎は、一人盛り上りホモの古株隊員湯沢藤次郎とも関係してしまう。そして数日後に湯沢は惨殺死体で発見される事になる.....
とまあ、粗筋だけ書き出せば、『御法度』はホモ同士が痴情を繰り広げる幕末ホモラブコメ映画だ。ただ新撰組は問答無用の肉体言語集団だったため、下のサヤでなくホンモノのカタナでカタをつけているのがテロリストの証ですな。しかしこれをたけしやチャラの旦那やトミーズ雅、果ては藤原組長らが一見大真面目に演じているのはもうベタベタのギャグ。だいたい『前髪の惣三郎』は『週刊ストーリーランド』程度のボリュームなのに、大島翁は何を考えたか、ボンクラオヤジが周囲に迷惑をかけまくる『三条碵乱刃』を強引に繋げて上映時間を無理矢理の延ばした上、最後は雨月物語を強引に引用(武田真司ヘタやぞ)、無理矢理お耽美モードなオチをつけさせてしまう。でも菊座、じゃなかった菊花の契りですぜ旦那、モロやないですか。どこがお耽美じゃい。
新撰組はカウンターテロのための組織だ。だが例によって連中のやってた事は、テロリスト以上に陰惨で残忍だ。とにかく逆らう奴等は斬りまくる、理屈はいらん、剣が全てじゃ、とまあ男の肉体言語の炸裂する、自己矛盾溢れる言語道断空前絶後の組織なのだ。映画にするなら、男汁テイストに溢れた『燃えよ剣』しかないでしょう。しかし耄碌した大島翁には真っ正面からエンターテイメントを撮るだけの技量も根性もないので、あえてホモをテーマに新撰組を撮りよったのだ。しかし女優の妻との40年一穴主義記念パーティーなどをした事からも分かる通り、大島翁は基本的にホモでもなんでもない普通のオッサンなのである。こんな芸術家気取りの耄碌ジジイがホモを撮るから、タイクツでつまらん映画になったんじゃないだろうか。
司馬遼さんはホモに振り回される連中が破滅していく様を冷ややかに描いているが、大島翁はホモを賛美したいのか、撲滅したいのか、結局やおいに受けるためだけにホモをテーマにしただけだったのね。だいたい原作をそのまま脚本にしとるし、刀がザクッ!血がブシュー!って、今さら椿三十郎かいな、クリエーターとしての矜持はどこへいったのか?いっそのこと、惣三郎は実は長州から送り込まれた双成りの間者で、後ろから前から同志連中を篭絡し、新撰組はあっという間にホモ地獄、シリを押さえてのたうち廻る連中をシリ目に、一倍ホモ嫌いの沖田総司が惣三郎の正体を見破り一刀のもと斬首!!しかし惣三郎は自分の首を抱え「おのれら皆いずれ地獄に堕ちようぞ、ファッファッファッ」と言い残し天空に消えていく...って展開ならボンクラ度120%で面白かったのに。あ、でもこれじゃまんま『魔界転生』やがな。いずれにしろ、ホモをテーマにしておきながら、出演者にボウイの様な真正ホモがいなかったのが、この映画の敗因でしょうな。
ところで誰かも言ってたけど、この映画には作品の根幹に係わる重大な欠点がある。それは松龍君がパタリロそっくりだという事である。彼は何をカン違いしたのか、役者の勉強のためアメリカ留学するんだそうな。きっと向こうで立派な真正ホモに成長して帰ってくることでしょう。一人の若者の人生を狂わせた大島翁の罪は重い....

映画の部屋へもどる