『フラッド』
わたる世間は雨ばかり、あう人みんなワルばかり
こないだの大雨はひどかったですねえ。
川は氾濫し、道路はえぐられ、家も車も流されてましたな。
これがアメリカになると、町ごと、それも2階まで水に浸かるくらいすごい大雨にな
るんですね。となると、この映画の洪水ぶりもあながちフィクションとはいえません。
で、今回紹介するのは『フラッド』洪水の意味ですが、現題は「HARD
RAIN」、
よ〜するにドシャ降りのことです。タイトル通り、映画の全編大雨続きの大洪水。
『パラマウント山(オープニングを見よ!)』のふもと、大雨で町中が水びたしの田
舎町ハンティングバーグ、川の上流のダムは今にも決壊しそうな雰囲気で、保安官ほ
か数人をのこして住民全員が避難。そんなところに通りかかった現金輸送車、車中に
は近郊の町から集めた現金が300万ドル、輸送担当は引退間近の老警備員と、最近こ
の職についたばかりの老人の甥。そして洪水に乗じて現金を狙うのが、これまた引退
(?)間近の老強盗ほか3名。映画の背景はそんなとこです。
銃撃戦の末、老警備員は死亡し、主人公トム(C・スレイター)は、現金を守るためあ
る場所に隠します。最後のヤマに命をかける強盗ジム(M・フリーマン)はそれを聞き
出すべくトムを執拗に追いかけます。、物語は最初この二人を中心に展開していくん
ですが、トムが助けを求めた保安官が、現金に心動かされてトムとを狙いはじめると
ころから、物語は以外な展開となっていきます。これに洪水から教会を守ろうと町に
残っていた女性・カレン(M・ドライバー)、異常な状況で変態趣味を露わにする保安
官助手、ダムを見捨てて保安官とともに現金を狙うダム係員らが、それぞれの思惑で
本性ムキ出しで行動するものだから、単純な「洪水アクション映画」にならず、見ごた
えのある作品となっています。なかでも秀逸は悪役を演ずるM・フリーマン、後半トム
に対して友情を示す『仁義あるワル』ぶりがなんとも素敵です。
C・スレイターも、清潔感とキレの良さがなかなか良し、思えばこの人の演ずる主人公
は、犯罪巻き込まれ型が多いですな。(『バラの名前』、『ブロークン・アロー』を見るべし)
雨雨雨、出会うひとほとんどワルばかり、脚本秀逸役者良し、見せ場も多数、ぜひ鑑
賞をおすすめします。