『CUBE』
男が目を覚ました場所は、『箱』の内側だった。内部の六面の壁の中央には人がくぐ り抜けられる程度の出入り口がある。試しにそのひとつを開いてみる。その向こうに は、ここと全く同じ造りの青い『箱』が、そして別の扉の向こうには赤い『箱』が。 意を決して赤い『箱』に入る男、何事も無いかに思えたその時、鋭い音と共にワイヤ ーカッターが彼をサイコロ状に切り裂いた!そう、『箱』には罠が仕掛けてあったの だ!! いやあ、えらいエグイオープニングでした。 この映画はカナダで制作されたそうで、監督も俳優も知らない人ばかりです。お金も あんまりかかってなさそう、CGも控えめですが、ホラー、サスペンス、ミステリー、 人間ドラマ、社会批判、とかなり密度の濃い内容でした。(蛇足ながら、D・クローネ ンバーグもカナダ出身なんだそうで、こちらも不条理ホラーが得意ですね) 新たに『箱(キューブ)』に閉じ込められたメンバーは、警官、脱獄犯、女医、エン ジニア、女学生、さらに精神薄弱の男。なぜ彼等が選ばれて閉じ込められたのか、と いう事がこの『箱』を作った連中の意図と脱出への謎解きに繋がってくるんですね。 キーワードは『高等数学』です。もしお閑なら、素数、因数、デカルト座標について の知識があれば、さらに面白く観られるんじゃないでしょうか。 もうひとつの見所は、『箱』に仕掛けられた罠の数々。冒頭の『人間サイコロカッタ ー』の他にも、『強酸顔面溶解』や『火炎放射器』、果ては『針ブスマ』まで。でも 一番の罠は、『絶望と狂気』なんでしょうなあ。 1時間40分、眼は画面にクギ付けでした。久々に『上質』のホラーを堪能させてもら いました。う〜ん、不条理だ。